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こいわずらい

現実と空想の狭間に視える景色

想いよひとつになれ 1日目

1st Live

2017年2月25・26日に開催されたAqoursの最初の一歩となるライブ。
ラブライブ!サンシャイン!! Aqours First LoveLive! ~Step! ZERO to ONE~』
本記事はライブビューイングで参加した筆者の瞳に、ライブを通じて視えた光景を共有したくて記したものです。ライブレポートとはとても呼べない、もはや薄れかけている記憶を頼りにした、現実と虚構の入り混じった文章ですが、どうかお付き合いください。


今回は、ライブ1日目に披露された『想いよひとつになれ』のお話。


未熟Dreamer』の興奮冷めやらないままに暗転した会場。
照明が息を吹き返しライトアップされたのは、壇上に用意されたグランドピアノ。光沢のあるその姿が光を反射したとき、ドクンと心臓が鳴った。見守っていた誰もがその意味を理解したのだろう。響いていた歓声はざわめきへと塗りつぶされていき、私もその中に飲みこまれた。


最初は冗談だろうと思った。梨香子をダンスステージからはけさせるための装置なんだろうと。いいわゆる弾き真似をするだけの演出にすぎないのだろうと。
その考えは、憶測というより希望だったのかもしれない。もしそれが実現してしまったら、ラブライブという作品において私が引いていた一本の境界線が弾けて消えてしまうような、そんな予感がしたのだ。


ピアノの次に目に入ったもの。
ひとりメンバーから離れて険しい表情を見せる梨香子の姿。
瞬間、彼女は本気なんだと、そう感じることしかできなくなった。
今からこのステージの上では、アニメというフィクションを現実にする禁忌が実行されるのだと。ある一種の恐怖に震えが止まらなくなった。


梨香子がダンスステージの方を見やる。本来演者がフロアに背中を見せるのはタブーだというのに、杏樹と朱夏は真っ直ぐに梨香子のいる壇上を見上げていた。わずかに映る横顔から、ふたりの顔が笑顔だということはわかった。カメラに切り取られた光景は、大きく映る杏樹と朱夏、ふたりの背中と、それとは対照的に遠く小さい梨香子の強張った表情だった。
曲が始まるまでの時間がひどく長く感じたのは覚えている。鍵盤を映すために用意されたカメラには終始、固く結ばれた口元と震える指先が捉えられていた。その姿はまさに悲痛と呼ぶに違いないものに見えた。


そして、ステージが始まる。
想いよひとつになれ
その曲の始まりは驚くほどにシンプルだ。杏樹の透き通るような歌声。それに少し遅れて、導かれるようにして鳴り響く、ピアノの伴奏。少しの揺らぎをも簡単に露呈してしまう、余計なものが一切省かれたフレーズだ。
音からは彼女の緊張がまざまざと伝わってきた。固すぎるくらいに丁寧な演奏は、一歩たりとも五線譜の道を踏み外さないようにという決意の表れだったのかもしれない。


杏樹が歌っている間、梨香子は間違えずに弾ききった。
そして、導いていた歌声が止むと、彼女のピアノはひとりで歩きださないといけなくなる。ピアノの音がひとつひとつ紡がれると、辿るように他のメンバーのダンスが始まる。鍵盤を叩く振りつけはまるで、ひとりで壇上に登った梨香子の指をみんながなぞり、背中を押しているようだった。


ソロの最後。押さえつけられた鍵盤の余韻だけが残る。誰もが息を飲む緊張。
瞬間、彼女の披露した力強グリッサンドは、解放感に満ち溢れた最高の音色だった。
それを合図に8人のメンバー、静かに見守っていた会場全体が一斉に生き生きと腕を振り上げた。誰もがみんな、湧きあがる達成感に衝動が抑えられなくなったに違いない。
そして、それはピアノに向き合い続けていた梨香子も同じだったのだろう。演奏中、彼女は終始緊張した表情のままだったが、奏でる音色は確かにステージの上で9人として躍っていた。


私は曲の終盤に見た光景が忘れられない。
バックスクリーンに映る8人の姿が梨香子の演奏するピアノの天板に反射していた光景が。
それはまさに、想いがひとつになり、ひとつのステージを作り上げた瞬間だった。


想いよひとつになれ。このときを待っていた
ただのひとりの観客に過ぎない私でも、彼女たちにそんな喝采を送りたくなってしまった。

 

逢崎らい / @aisakiLie